オリジナルTシャツを作成する際に、よく用いられるプリント方法として「シルクスクリーンプリント」という方法があります。今回はその中でも「網点プリント」と呼ばれる技法についてご紹介いたします。
Contents
網点プリントとは
網点プリントとは「フルカラー」や「グレースケール」で表現されたデザインをプリントする際に使用する技法です。(グレースケールとは、白と黒の中間色であるグレーの濃淡を、256階調(8bitの場合)で表したものです。)
通常、シルクスクリーンプリントでは、1色ずつベタ塗りでプリントするため、濃淡の表現ができません。しかし、デザインを網点加工することにより、1色で濃淡を表現することができます。
試しにレオナルド・ダ・ヴィンチが描いた肖像画「モナ・リザ」を網点加工してみました。網点の集合でデザインを表現していることがわかります。
網点プリントの表現方法
網点プリントは、網点の集合でデザインを表現します。この網点の集合パターンによって、デザインの濃淡を表現します。網点の間隔の広さや大きさのバランスによって、仕上がりが変わります。
網点の大きさは「線数」という単位で表現します。線数は網点の密度を表しており、線数が多いと網点が小さくなり細かい表現が可能になります。反対に、線数が少ないと網点が大きくなり粗い表現になります。
例として「10線」「30線」「50線」という3種類のデータを作ってみます。
10線が最も粗く、30線、50線と線数が多くなるにつれ、どんどん細かくなっていくことがわかります。
網点プリントのメリット・デメリット
メリット
写真やイラストをレトロ感のあるデザインでプリントできる
フルカラーのデザインを網点加工し1色で表現することで、レトロ感のあるオシャレなデザインになります。
フルカラープリントに比べてプリント料金が安い
網点プリントでは1色でプリントをするため、インクジェットプリントや転写プリントに比べてアイテム1枚あたりのプリント料金が安くできます。また、プリントに使用する「版」を1度作ってしまえば、次回から版代がかからないこともポイントです。
デメリット
再現できるデザインに限度がある
網点の集合で表現するため、細かすぎるデザインは再現できません。小さい顔や文字などは潰れてしまい思うように再現できない場合があります。
以下の例では、人物の顔や看板の文字が潰れていることがわかります。
以下のような「空と雲」のデザインの場合、色が複雑であるため網点プリントでは表現が難しいです。再現度を高くプリントしたい場合はフルカラープリントをオススメします。
再現度はフルカラープリントより落ちる
網点プリントはモノトーンでの表現しかできません。グラデーションやマーブル模様などキレイに表現できません。フルカラープリントではデザインデータをそのままプリントするので、再現度が高いプリントが可能です。
網点デザインの作成方法
インファクトリーでは、お客様からいただいたデザインデータを弊社にて網点加工します。網点プリントの仕上がりをキレイにするためには、網点加工は非常に重要な工程になります。その際の注意点を紹介いたします。
色調補正をする
黒色インクでプリントする場合、元のデザインが全体的に暗いと、プリントした際にインクの量が多くなり、ベタ塗りのようになってしまいます。この場合、デザインデータを明るく調整する必要があります。
線数は30から40にする
プリント可能な網点の大きさには限度があり、網点が細かくなりすぎると、インクが版に詰まってしまいプリントできません。基本的な線数は「30線」、より細かく表現したい時に「40線」にします。
線数が30線より少ないと、仕上がりがかなり粗くなります。あえて粗くプリントしたい方は、線数を少なくすることも可能です。
網点の角度を40度にする
網点の角度を90度や180度にするとモアレが起こりやすくなります。モアレとは、網点の角度と版のメッシュの角度、または生地の網目などの要因によりん、意図しない模様が現れる現象のことです。モアレが起きないようデータ加工、製版しておりますが、デザインや生地によってはどうしてもモアレが起きてしまう場合がございます。
網点プリントをする際の注意点
網点プリントをする際に注意している点を紹介いたします。
細かいデザイン用のインクを使用する
網点プリントはインクの目詰まりが起こりやすいため、目詰まりしにくい「柔らかいインク」を使用します。
デザインが潰れないようにプリントする
デザインが細かいため、インクが滲みやすく、ベタ塗りになってしまう恐れがあります。ベタ塗りになると濃淡を表現できません。そのため、スキージ(インクを刷るための道具)を押し込む力を通常より少し強くします。スキージ選びもポイントで、通常の薄く柔らかいスキージではなく、柔軟性のある少し硬いスキージを使用します。
また、同じ場所に何度もプリントするとデザインが潰れてしまいます。より少ない回数で丁寧にプリントを仕上げます。
版の目詰まりが起こらないようにする
版にインクの目詰まりが起こらないよう、通常よりもプリントのスピードを早くします。しかし、網点プリントでは、どうしてもインクが詰まってしまいます。目詰まりがあるとキレイにプリントできません。目詰まりが起こった場合は、版のインクを拭き取り、目詰まりを解消してからプリントを再開します。
失敗しない網点プリント方法
網点プリントで失敗しないプリント方法を紹介いたします。
インクの色は黒か白
インクの色は黒色か白色がオススメです。白地に黒色プリント、黒地に白色プリントが生地とプリントとの明暗がはっきり別れてキレイにプリントできます。他のインク色でもプリント可能ですが、生地と同系色のインクだと視認性が低下するため、注意が必要です。
アイテムは綿100%のTシャツ
アイテムは綿100%のTシャツがオススメです。綿100%はドライ素材に比べてインクの発色が良く、さらにインクが剥がれにくいという特徴がありあます。
パーカーやスウェットなどの裏起毛素材は生地が厚く、プリントがずれやすくなります。また、ポロシャツやキャンバス地のバッグなど、生地の目が粗いほどプリントの再現度は低くなります。
人物をプリントするなら出来るだけ大きく
人物をプリントしたい場合、顔が小さいと潰れてしまい判別できなくなります。鮮明にプリントしたい場合は、できるだけ顔が大きく写っている写真にします。
多色プリントも可能
網点デザインとは別に、文字やイラストをプリントできます(前面に網点プリント、背面に文字など)。また、網点デザインの上に重ねてプリントすることも可能です。
まとめ
今回は網点プリントについて紹介しました。オリジナルTシャツの作成で、フルカラーのデザインを1色でオシャレにプリントしたい場合、網点プリントがオススメです。網点プリントで他と被らないオリジナルTシャツを作ってみましょう。
インファクトリーではデータ加工からプリントまで全て自社で行なっており、質の高いプリントが可能です。オリジナルTシャツ作成でお悩みの方は、まずはインファクトリーまでご相談ください。