シルクスクリーンプリントにおいて、複数の色を使用しプリントすることを「多色プリント」といいます。
プリント色ごとに「版(はん)」を制作し、生地にインクを1色ずつプリントしていきます。
1色ずつプリントしていくため、色同士がずれないようにすることが必須となります。そのためには「版の制作」「デザインデータの加工」「刷る際の版の位置合わせ」が重要です。
今回は多色プリントの位置合わせの方法と刷り方を解説していきます。
Contents
版の制作
多色プリントをする場合、プリント色の数だけ版を製作します。以下のデザインの場合、インクを2色使用するため、版を2つ作ります。
色ごとにデザインデータを分ける
デザインデータを1色ごとに分けます。デザインデータには「トンボ」が入れてあり、位置をあわせる目印になります。
版をつくる
デザインデータ上で「トンボ」の位置を合わせ版をつくります。トンボで位置を合わせることにより、2色のデザインの位置が揃った版ができます。
この版を使用しプリントすると、以下のようになります。1色目に赤色をプリントした後、インクが乾いたら2色目の黄色をプリントします。このように、位置を合わせた版を作ることにより、2色の位置が揃ったプリントができます。
色の重なりがあるデザインのデータの加工
お客様からいただくデザインには様々なものがあります。中には色と色が重なり合うようなデザインもあります。そのようなデザインの場合、重なり合う色のプリント順を考え、色と色との間に隙間ができないように、デザインデータを1回り「太く」して版を制作します。
上のように、重なりのあるデザインをプリントする方法の一つに、黄色のデザインに黒のデザインをそのまま重ねてプリントする「オーバープリント(ノセ)」があります。最初に黄色のデザインをプリントした後、黒のデザインをプリントします。
この方法では。プリントの位置合わせの精度はさほど重要ではありません。しかし、インク色によっては濃色をプリントした後、淡色をプリントすることで淡色が透けてくすんだようになってしまいます。また、重なる部分のインクが厚くなりプリント面が均一でなくなります。
インファクトリーでは、オーバープリントではなく、重なる部分を「抜いて」デザインデータをつくります。重なる部分を抜いた箇所を「抜き(ヌキ)」といいます。
抜きの部分は同じ大きさでぴったり合うこともありますが、色同士が接する余裕がないため、プリントする際に少しのずれで隙間が空いてしまいます。
シルクスクリーンプリントでは、1色プリントするごとに熱でインクを乾かします。そのため、生地の伸縮が起こり、デザインに隙間が空きやすくなります。そこで、以下の画像のように抜きの部分に色同士が接する箇所をつくる加工をします。
色同士が接する箇所を作ることにより、多少のずれがあっても隙間ができなくなります。この加工により、黄色のデザインデータの抜き部分の面積が小さくなりました。これを「太くする」と言います。
今回のデザインの場合、最初に黄色のデザインをプリントし、次に黒色のデザインをプリントします。
順番を逆にすると黒色のデザインが細くなってしまうため、注意が必要です。
版の位置合わせの方法
多色プリントでは、1色ごとに色を重ねてプリントしていきます。そのため、プリントをする際には版の位置合わせが必要になります。
中心を合わせる
プリント台に版を置き、トンボの中心を合わせます。
左右の位置を調整する
版を固定する金具があり、固定する位置を変えることにより、左右の調整が可能です。この金具がプリント台の「ポイント」と呼ばれる箇所に固定されます。
高さを調整する
版の左右下側にネジがついており、高さが調整可能です。ネジを上げると高くなり、ネジを下げると低くなります。左右差により斜めにも調整可能です。
多色プリントの実践
今まで見てきた技法を使い、実際のTシャツにプリントをしていきます。今回は弊社のロゴをプリントします。弊社のロゴは「グリーン」「イエロー」「レッド」「ホワイト」の4色から成っています。
グリーン→イエロー→レッド→ホワイトの順にプリントします。1色プリントするごとに乾かし、インクを重ねていきます。
グリーンをプリント
プリント台の中心にグリーンの版を揃えプリントします。
イエローをプリント
イエローの版をグリーンのプリント部分に重ね、隙間ができないように合わせプリントします。
以下の画像では、グリーンでプリントした部分とイエローでプリントする版が少し重なっていることがわかります。これにより、隙間なくプリントできます。
レッドをプリント
レッドの版を、イエローとグリーンとの重なりを見て合わせプリントします。
以下の画像では、重なりの合わせ方を示しています。ネジで左右の高さを調整し、金具で固定します。
レッドでプリントする版を合わせる(調整前)。
版の星と虹のイエローとグリーンの重なる部分がずれている 。
ネジで高さを調整。
調整後はこちらになります。
金具で固定。
レッドでプリント。
レッドでプリントができました。
ホワイトをプリント
ホワイトの版を、グリーン、イエロー、レッドとの重なりを見て合わせプリントします。
左右のバランスを見て全ての色との重なり合わせます。
完成
綺麗に隙間なくプリントできました。
まとめ
以上のように、多色プリントでは1色ずつプリントをしていきデザインがパズルのように組み合わさって完成されていきます。版を作る際の重なる部分を作る技術、色同士の重なりを見ながらプリントする技術など、様々な技術により多色プリントができています。
最後に
今回は多色プリントの位置合わせの方法と刷り方の解説をしました。
版を制作する工程、プリントする工程でキラリと光る職人の技術がありました。
インファクトリーでは、そんな職人たちが1枚1枚丁寧に心を込めて仕上げてお客様のお手元にお届けしています。
オリジナルTシャツ作成でお悩みなら、ぜひインファクトリーにお任せください。
Written by 磯谷